公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2001年度[第10期]
2001年11月23日/白峰 望岳苑
シリーズ読書について4

小説を読む

辻原登・湯川豊
辻原 登/1945年、和歌山県に生まれる。小説家。東海大学文学部教授。90年『村の名前』で芥川賞。2000年『遊動亭円木』で谷崎賞。ほか作品多数。

湯川 豊/1938年、新潟県に生まれる。東海大学文学部教授。64年文藝春秋に入社し、「文学界」編集長、常務取締役を経て2003年退社。読売新聞書評担当。
 小説を読む醍醐味は「読むのが楽しいかどうか」だと思う。書き手の立場で言えば、小説家がやれることは「夢を方向づける」ことでしかない。その方向づけられた夢を読み手が楽しむ。もちろん楽しみ方は人それぞれだ。 音楽家が、音の世界から音を抽出して、夢を方向づけるように、それを言葉でやるのが小説家だ。ただ人間は言葉によって生活し、人生に関わっている。小説が他の芸術と大きく違うところはそこにある。 湯川氏が言うように「誰もが自分自身の物語を作り上げて」生きている。だからこそ作家が作り上げた「他人の物語」を理解・共感することができるのだろう。読者が自分の小説で「同じ夢を共有」してくれることができれば幸せだ。