公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2003年度[第12期]
2003年5月30日/白峰 望岳苑

地名(俳枕)について

鷹羽狩行
鷹羽 狩行/1930年、山形県に生まれる。俳人。「狩」主宰。(社)俳人協会会長。山口誓子、秋元不死男に師事し、65年句集『誕生』で俳人協会賞受賞。74年『平遠』で芸術選奨文部大臣新人賞。99年文化関係者文部大臣表彰、2002年毎日芸術賞受賞。
 俳句で一番大切なものは季語だ。次に重要な働きをするものは俳枕、つまり地名だ。地名を詠む場合、それを「句に直接取り込む場合」と「前書きにする場合」の二通りがある。芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」は後者だ。「奥州高舘にて」と前書きすることで、義経が最期を迎えた土地の歴史や雰囲気が伝わってくる。「五月雨を集めて早し最上川」は直に地名が取り込まれている名句だ。注目して欲しいのは、マ行音が全体に働いて、最上川という地名を動かせない、他の地名に置き換えられないものにしていることだ。この「調べの力」が地名を詠む場合の大切なポイントになる。名句によって季語が生まれるように、名句が地名を俳枕にする。そういう句を残すことで、地名を守ると同時に、その土地の歴史や風土、自然を守ることにつなげていきたい。