公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2003年度[第12期]
2003年9月4日/白峰 望岳苑

裾濃の海の藍

新垣幸子
新垣 幸子/1945年、疎開先の熊本に生まれる。石垣で育ち、73年、新垣織物工房を設立。文献などを基に、幻の織物といわれていた括染の八重山上布を復活、普及させ八重山の織物業を活性化させた。その作品は高く評価され「現代の名工」に数えられている。
 若い頃、生涯を通してできる仕事がないか探していた。手仕事に憧れをもっていたので、ある出会いを契機に織物の世界に入った。石垣島で織り始めたが、当時の八重山上布は「地色は白、模様は捺染染色」が常識だった。それに疑問をもち、古文書を調べると「藍で染めた絣」を想像させる記述があった。だが「物」がない。ある日、東京の日本民藝館を尋ねると、そこには「藍染めされた様々な柄の八重山上布」があった。藍染めは明治以降、織物が産業として生きねばならなかった過程で、手間がかかると廃れ、忘れ去られていただけだった。以来、その復元に取り組むことで、自分なりの八重山上布を作ってきた。明治以前の伝統的な技術の多くが既に失われている。技術は伝えられなければ途絶える。だからこそ、今ある技術を大切に伝えていかねばならない。