■2010年度[第19期]
2010年6月12日/白峰 望岳苑
高山に咲く花
森和男
森和男/園芸家、山野草栽培家。国内外で植物研究につとめ、1990年の国際花と緑の博覧会ではヒマラヤの青いケシ8,000本を咲かして話題に。白峰で高山植物の栽培を指導。
高山植物とは何かといえば、一般的には、ハイマツ帯以上に生息する植物のことだ。白山では標高2300m以上になる。ただ、高山植物だからといって一概に高いところに生えているとは限らない。例えば本州では高山帯に咲くミヤマオダマキも北海道の礼文島では、海岸の草原に生えている。北へ行けば行くほど緯度の関係から、生息地は下におりるのだ。そんな日本の高山植物が危ない。それは盗掘というより、地球環境の変化によるものだ。このまま地球温暖化が進めば、白山の高山植物も頂上付近だけにしか見られなくなるいま、日本はようやく絶滅危惧植物の保全に乗り出した。だが、種子を保存するだけではだめだ。その栽培技術を同時に残さなければ、種子が役に立つことはない。栽培は人間がするものだ。だから、技術を継承するためには、継続的な栽培が必要になる。栽培技術が低下すれば、個体数が劇的に少なくなった種を救うことはできない。かつてのトキがそうだった。白峰で行われている絶滅危惧植物の保全事業は、そういう意味で画期的なことだ。国内のみならず世界に目を向けても、これほどまでに取り組んでいるところはないだろう。末永く見守ってほしい。