公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2010年度[第19期]
2010年7月3日/白峰 望岳苑
俳句の楽しさ11

発想の転換

鷹羽狩行
鷹羽狩行/1930年、山形県に生まれる。俳人。「狩」主宰。(社)俳人協会会長。山口誓子、秋元不死男に師事し、65年句集『誕生』で俳人協会賞受賞。74年『平遠』で芸術選奨文部大臣新人賞。99年文化関係者文部大臣表彰、2002年毎日芸術賞受賞。
俳句は発想の転換が大切だ。そのためにはまず季語をよく知ることから始めなくてはならない。季語に精通することでいい句ができるからだ。 <叱りつつ 子の手引き行く 日の短か> 短日という季語が持っている気ぜわしさがよく出ている句だ。少し親の苛立った気分も感じられて、悪くはない。だが、季語を変えるとどうか。 <叱りつつ 子の手引き行く 七五三> にわかに華やかにならないだろうか。おめかしした子供たち。七五三詣りの風景。叱るという内容がグッと明るくなって、面白い。 <雪囲い 親方がきて わらがきて> 句の意味はよくわかるが、報告になって、詩情が感じられない。こういうときは語順を変えてみることだ。 <わらがきて 親方がきて 雪囲い> 意味は同じだが、詩情は格段に上がる。上語、中七、下五のイメージが時間の経過と共に飛び込んできて想像がふくらむ。これは「月がでたでた(炭坑節)」と「でたでた月が(唱歌)」の違いだ。時間芸術である俳句は後者の方がいい。これも発想の転換の一つの方法だ。 俳句を作るとき、選んだ季語が動かないか、言葉が動かないか、がんじがらめになるのではなく自在に考えることが必要だ。そうすることでもっと良い句が生れるはずだ。ぜひ、挑戦してみてほしい。