公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2012年度[第21期]
2013年3月23日/白山市 松任ふるさと館

森鷗外の生涯

寺田農
寺田農/俳優。1942年、洋画家寺田政明の長男として東京に生れる。文学座付属演劇研究所の第一期生。現在、映画、テレビ、舞台、朗読、声優など多方面で活躍中。
 森鴎外が昨年、生誕150年を迎えた。夏目漱石と並ぶ日本の国民的文豪がどのような生涯を送ったのか、朗読を交えつつ、話してみたい。もちろん、作品が素晴らしければ、作者がどうのこうのという話は本来必要ない。ただ、その人となりを知ることで、作品について興味が湧いてくるということもある。
 鴎外は島根県津和野で、御典医の家系に生まれた。本名、林太郎。幼少の頃より神童と言われ、実年齢を2歳偽って、12歳で東京大学予科に入学。19歳で医学部を卒業する。22歳、ドイツ留学。細菌学のコッホ研究所などで学ぶ。このとき、のちの『舞姫』のモデルと目される女性に出会うことになる。帰国後、31歳で陸軍軍医学校長に昇進。その一方で自宅を「観潮楼」と名づけ、創作活動にも熱中した。41歳で日露戦争に軍医部長として従軍。日本軍を悩ましていた脚気問題に関わる。このあたりのことは辻原登さんの『許されざる者』に詳しい。その後、45歳で軍医トップの陸軍軍医総監。文筆活動は以後、益々旺盛になり、数々の名作を残し60歳で他界する。
 三島由紀夫は鴎外の文章を「漢文的教養の上に立った簡素で清浄な文章」であると絶賛した。『最後の一句』を朗読する。聞いてほしい。