■2001年度[第10期]
2001年6月26日/白峰 望岳苑荘
岡本太郎が
沖縄でしたこと
池澤夏樹
池澤 夏樹/(財)白山麓僻村塾塾長。小説家、詩人。『スティル・ライフ』芥川賞、『母なる自然のおっぱい』読売文学賞、『マシアス・ギリの失脚』谷崎潤一郎賞、『すばらしい新世界』芸術選奨。芥川賞選考委員。沖縄在住。
写真集『岡本太郎の沖縄』は、1967年当時の沖縄人たちの顔をよくとらえた見事な本であり、やはり岡本はただ者ではなかったと思わせるものだ。しかし、書評で紹介することをためらった。それは久高島で、岡本が風葬途中の、まだ死者が判別可能なところを写真撮影し、それを雑誌に発表したことを知っていたからだ。久高島はこの事件をきっかけに風葬をやめた。岡本の写真は島の人々にとって大変ショックなことだったのだ。
岡本は沖縄文化への善意の理解者であった。でも結果として、島の人々を深く傷つけた。
異文化を理解することは難しい。岡本の本と併せて比嘉康夫『沖縄久高島』も読んでほしい。久高島に心許された作者の視点を知ることも必要だと思う。