公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2001年度[第10期]
2001年8月25日/白峰 遊月山荘

差別と偏見

池澤夏樹
池澤 夏樹/(財)白山麓僻村塾塾長。小説家、詩人。『スティル・ライフ』芥川賞、『母なる自然のおっぱい』読売文学賞、『マシアス・ギリの失脚』谷崎潤一郎賞、『すばらしい新世界』芸術選奨。芥川賞選考委員。沖縄在住。
 差別。それはなぜ生まれるのか。そこには私たち一人ひとりの「心のからくり」がある。ちょっとした見方の違いが「優劣」にすり替わり、優の立場にいると自覚する人たちの「優越感」が次第に強制的になる。単に気に入らないから、邪魔だ、いないほうがいい、そういう偏見が制度化され差別になり、時には法律となる。かつて日本の対アイヌ、沖縄政策、ヒトラーのユダヤ人政策などを思い出してほしい。また差別は「誰かにとって都合の良い環境を固定するために、他を排除する」面を持っていることを忘れてはならない。 偏見はある種の「ものさし」をあてるところから始まる。しかし人は、一本のものさしでは計りきれない。社会全体がそういう意識を持ち始めれば差別制度も力を失っていくのではないだろうか。