公益財団法人 白山麓僻村塾

活動の記録

2009年度[第18期]
2009年5月31日/白峰 望岳苑
アートの旅11

万葉の里を訪ねて

真野響子
真野響子/女優。1952年生まれ。ドラマ、映画、雑誌等様々な分野で活躍中。2002ワールドカップ日本組織委員会理事。金沢大学非常勤講師。
 大伴家持に会いたくて、富山県高岡市での仕事を引き受けた。家持は万葉集の編者として名高いが、29才のときから5年間を国守として高岡で過ごした。この時期は、その後の彼の人生を考えれば黄金時代だったといえるものだ。仕事の面はむろんのこと、和歌に関しても、いい歌をたくさん残した。 高岡といえば、加賀藩二代目藩主、前田利長公ゆかりの地でもある。実は前田家と家持のつながりは深い。日本に現存する万葉集の最古写本は前田家のコレクションなのだ。天下の書府といわれた前田家の懐の深さには驚くばかりだ。 私が一番好きな家持の歌を紹介したい。高岡周辺で詠んだものだ。

<もののふの 八十(やそ)をとめらが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花>

堅香子とはカタクリの花のこと。若い女性たちが寺の泉に湧く水を汲む様子とうつむきかげんに咲くカタクリを重ね合わせて詠んだものだろう。 北陸には知られざる文化遺産がたくさんある。ぜひこれからも訪ねてみたい。