■2009年度[第18期]
2009年9月19日/白峰 望岳苑
俳優と作家 二人の表現者
寺田農・辻原登
辻原登/小説家。1945年生まれ。『村の名前』芥川賞。『翔べ麒麟』読売文学賞。『遊動亭円木』谷崎賞。『枯葉の中の青い炎』川端康成文学賞。『花はさくら木』大佛次郎賞。
寺田農/1942年11月7日東京都出身。俳優、声優。2008年4月、東海大学文学部文芸創作学科特任教授に就任、「現代映画論」「演劇入門」「戯曲・シナリオ論」の各科目を担当する。
主な作品…■映画・『肉弾』『座頭市と用心棒』『里見八犬伝』『帝都物語』 ■ドラマ・『君は海を見たか』『あいつがトラブル』『月下の棋士』『ドラゴン桜』■声の出演・『天空の城ラピュタ』
朗読やナレーションの仕事で気をつけるのは、漢字の読み方だ。例えば「間」という字。アイダと読むのか、マと読むのか、カンと読むのか。文脈上、どの読みでも可能という場面に出くわすことが多い。原作者はまさか後々、朗読されるということは想定していないだろうから、ルビが入っていない。だから、私は朗読するときは、すべての漢字という漢字にルビをふるようにしている。志賀直哉先生はこの漢字の読み方に大変厳しい方だった。以前、失敗したことがある。朗読に対する難易度を言えば、現代小説は近代小説に比べてやりやすい。漱石の「草枕」なら、使われていることばにもう注釈が必要になるほどだ。詩、短歌になると難易度は上がる。究極は俳句だ。五七五で芭蕉の宇宙観をどう表現するか。お手上げだ。朗読をしていて気がついたことがある。声に出して読んでいるうちに理解度が上がる、ということだ。特に古文はそうだ。時代劇の寺子屋で、こどもたちが大声で読んでいるシーンがあるけれど、あれは決して間違ってはいないと思う。声を出すことによって、なんとなく意味がわかってくるのだ。これから読む「遊動亭円木」は大好きな作品だ。ぜひ皆さんも声を出して読んでみてほしい。