■2011年度[第20期]
2011年11月5日/白山市白峰 白山ろく民俗資料館
山の民の智恵とわざ1
植物利用の達人たち
塩野米松・山口一男
塩野米松/作家。1947年生まれ。聞き書きの名手で、失われゆく伝統文化・技術の記録に精力的に取り組む。2003年『なつのいけ』日本絵本賞大賞。『聞き書き にっぽんの漁師』『手業に学べ』『木の教え』 ほか書多数。
白山麓と東北の山の道具について話したい。同じ雪国だから、使う道具は似たものがたくさんある。けれど、さまざまな理由から少しづつ違っている。例えば、かんじき。北海道はマンサク。会津はリョウブ。秋田はジサ。白峰ではクロモジを使う。何の木を使うか、というのは実はすごく難しいことで、どんな素材でもかんじきの形をしていれば(雪上を)歩けるは歩ける。秋田では杉のかんじきもある。ところが、これはマタギは決して使わない。斜面を歩く途中で折れる可能性があるからだ。雪崩が起こりうる場所を行くマタギは命がけ。用途に合わせて素材を吟味するのが当たり前だ。
一方、そういう中から、道具づくりの名人が生まれた。それが蓑の場合、「あの人のやつはすごく長持ちする。軽い。水はけがいい」ということがあって、自然とその人に依頼が行き、やがてその人は蓑屋になった。そこで技術が蓄積され、今度はもっとお洒落にしたいという気持ちが生まれ、個性的なものができた。それが日本人のいいところだった。道具の素材はすべて山にあった。だから、手入れは欠かせなかった。この習慣があって、日本のものづくりの伝統があった。このような背景を私たちはもう一度、学ぶべきではないだろうか。